家売るオンナ

家売るオンナというドラマがありました

どんな家でも私にかかれば、売れない家はない

こんなキャッチフレーズのもと、じゃんじゃん家を売りまくるそんなドラマでしたが、私的にはこのキャッチーなフレーズよりも、いつもその売り方のストーリー性に注目して視聴していました。

ただ高い家を売るだけではなく、毎回買主さん、売主さんにもドラマがありました。

その名の通り、ドラマ、テレビドラマですから、ストーリーがあるのは当たり前なんですが。(笑)

何となく今までの自分の不動産営業のやり方、考え方に近しいものがあったため、楽しみにしていたドラマの一つでした。

建売屋さん時代

私は元々この業界に入った時には家を売る仕事、いわゆる建売屋さんから始まったのですが、正直その物件が高いのか安いのかも分からない素人でしたし、その会社が売っている商品しか知らなかったため、近隣相場も分からない状況で営業を始めました。

時代がよかったのか、私が営業に向いていたのか(笑)分かりませんが、とにかくそんな状態でも売れました。

ただ、自分自身の達成感はなかったんですよね。

右も左も分からない状態でスタートした不動産営業でしたが、兎にも角にも知識を身につけるため本、不動産や建築の専門書を読み漁りました。

難しい専門用語を駆使しながら、営業テクニックの本も読みながら、売るために努力はしました。

でもね。

面白くないんですよ。

もちろん売れればお給料に反映しますし、褒められます。

でも満足感は得られませんでした。

なぜ?

家をほしいと思って買いに来るお客さんに、ただ家を売るだけ、いくらまでローンを支払えるか計算して、その予算に合わせた物件を提案するだけ。それだけだったからです。

売りたい家があると、その物件の学校区、小学校、中学校までの距離、ルート、買い物施設がどこにあり、何時まで開いているのか、そんなことは全て頭の中に入れて営業に挑んでいました。

いくらの年収なら、この家が買えるのか、いくらの金利で毎月の支払額がいくらになるのか、そんな収支計算も暗記し、質問が飛んでくればすぐに答えれるように準備していました。

なので、売れました。

でも売れるのは自社の商品のみです。

自社物件以外を売ることは評価されませんでした。

他社の仲介物件はもってのほか、紹介することもNGで教え込まれましたし、自社専任の仲介物件もできる限り勧めないように指示されました。

今考えたらその理由は分かります。

自分が採用されたのは、自社建売住宅、新築戸建を売るためだけに採用された要員だったからです。

でも、少しづつ勉強し、知識が身に付き始めると、そこに疑問を感じるようになります。

売った家より安い家を見つければ、あの家でよかったのかと自問自答し、本を読み知識を身に付け、経験を積めば積むほど、経験がない状態で売ったお客様に対して申し訳なさを感じる。

そんな思いもあり、仕事がどんどん楽しくなくなっていきます。

不動産仲介という仕事自体、自分に向いていないのではないかと考えだし、仕事を辞める決断をします。

その時の自分は、【家だけ売るオトコ】だったわけです。

大好きで没頭していた仕事でしたから、辞めた後はぽっかりと穴が開いたようにただボーっと過ごす日々が続きました。

1ヶ月ほどが経ったとき、生活費も底を尽きアルバイトを探し始めます。

そこで出会った求人が賃貸仲介の仕事でした。

 

賃貸仲介時代

賃貸仲介という仕事、その時まだ自分自身が23歳になったばかりという時期でもあり、お客さんの年齢層ともちょうど合致しており、ちょうど自分の身の丈に合った仕事だと思い、面接に出向きます。

そこで働く先輩たちは、同年代ばかり。

ダブルのスーツに身を覆い、そこはまるでホストクラブかと思うような煌びやかな先輩ばかりでした。

ただみんな楽しそうに仕事をしていましたし、実際みんな稼いでいました。

『この仕事稼げるで。頑張れば頑張るほどお金がもらえるし、いいスーツも着れるし、いい車にも乗れる。こんないい仕事ないで』

そう言われ、目をキラキラとさせてこの仕事に飛び込んだことを覚えています。

そこにはいろいろなタイプの先輩がいて、営業の見本には事欠きませんでした。

押しの強い営業マン。丁寧に物件説明をする営業マン。

しゃべっていることの半数以上は口から出まかせの営業マン。

一人一人がどんなことをしゃべり、どんなクロージングをしているのかを学ばせていただきました。

1店舗で毎月100来店を超えるような営業店舗でしたから、自分の営業スタイルを確立するには絶好の場だったと思います。

口八丁手八丁のスーパー営業マンの先輩たちを見ていて、気づいていったことがあります。

売上、数字ではきっとこの人たちには勝てない。

自分の存在価値を見出すためには、違うやり方をしないといけない。

自分は目先の売上ではなく、一人一人のお客さん、全員、一人残さず契約できるような営業スタイルを確立していこう。

売上高〇〇万円ではなく、決定率100%、ここを毎月の目標として設定していく営業スタイルが確立していったのはこの時期だったと思います。

 

『自分だったら、こんな家に住みたい』

『彼女と住むなら、こんな家に住みたい』

『結婚したらこんな家に住みたい』

と、自分が住みたい家、自分がお客さんの立場ならこんな家を選ぶという視点で物件提案を行っていきました。

年齢層も近い分、お客さんの気持ちが理解しやすかったのかもしれません。

そこには、不動産知識もテクニックもありません。

しかも、自分が住みたい家を勧めているわけですから、きっと楽しそうにうれしそうに話していたんでしょうね。

決まりました。たくさん決まりました。

テクニック的な要素でいうと一つだけ。

自分が話をしているのはウソでも営業でもなく、自分が思っている真実だということを分かってもらうために、話を聞いてもらえる下地を作ることだけです。

そのためには、まずお客さんの話を聞くことです。

お客さんの家族構成(単身入居か否か)、収入、通勤先はもちろんのこと、独身の男性なら今彼女がいるのか、一緒に住もうとしてないのか、結婚を考えたりしていないか。

ご夫婦、新婚さんなら、将来の家族構成も含め、その先にはいつか家を買いたいのか、ずっと賃貸のまま過ごそうとしているのかなど、将来のビジョンをお聞きしたりするところから始めていました。

今と違い、いつかは持ち家、マイホームを持つのがステイタスという時代でしたから、賃貸は仮住まいなのか?

ずっと賃貸で住むつもり。でも、いい部屋を転々としたいのか、それとも安い部屋で長く住み続けたいのか、そんな話を雑談も交えながら長々とお話していました。

もちろん、こんな話を聞きたい人ばかりではありませんから、中には

『そんな話はいいから、とりあえず物件を紹介して』

こんなお客さんもいます。

そういったお客さんには、スピーディに物件だけを紹介する。気に入ったら決めてくれるし、気に入らなかったら決めてくれない。

そうしたお客さんが求めているのは、不動産のアドバイザーではなく物件だからです。

そういう人たちには物件紹介マシーンと化します(笑)

お客さんが何を求めているか?

そのオーダーに応じるのが自分の仕事だと思っていました。

何しろ、決定率100%を目指していましたから。(笑)

ただ、こういったお客さんが続くとテンションが下がります。

だって、自分じゃなくてもいいじゃん。

こう思ってしまうからです。

でも、時代の流れか、その頃はインターネットで集客する時代へと突入する過渡期でした。

地元の不動産屋さんに飛び込み、いい物件を探してくれる、自分に合った物件を探してくれる、そういう不動産屋さん、営業マンを探す時代から、自宅で物件情報を閲覧しターゲットを絞ってアポを取る時代。

たしかにお客さんにとっては便利な時代になったのかもしれません。

たまたま出会った営業マンの優劣でなく、平均値の物件を誰でも手に入れれる時代になったのですから。

この頃、その賃貸仲介の不動産会社に入り7年が経過していました。

楽しかった時代は過ぎ去り、その後の自分の未来を想像するようになっていきます。

自分が楽しくない仕事をしていると、仕事は【お金を稼ぐための道具】と化してしまいます。

そうした仕事の在り方に疑問を感じてしまい、転職することになりました。

その話の続きは次回で。