家賃は掛け捨て?購入は資産?―― これからの時代の「住まいの選び方」

「家賃は掛け捨てだから、できるだけ早く家を買ったほうがいい」
不動産の現場にいると、今でもよく聞く言葉です。
たしかに、家賃をいくら払い続けても、そのお金が将来返ってくることはありません。
一方で、住宅ローンは返済を続けることで、不動産という“形のあるもの”が手元に残ります。この違いだけを見ると、「購入=正解、賃貸=損」と感じてしまうのは、ごく自然な感覚だと思います。
ただ、この考え方が広く浸透した背景には、超低金利時代という特殊な環境がありました。
金利がほぼ動かず、住宅ローンの負担感も小さく、価格が多少高くても「いつか売ればいい」と考えられた時代。その前提のもとでは、「とりあえず買っておく」という判断も、ある意味では合理的でした。
しかし、その前提が少しずつ崩れ始めています。
金利は上昇局面に入り、家賃もまた、じわじわと上がり始めています。これまで当たり前だった価値観が、静かにズレ始めているのが、今の不動産市場です。
だからこそ、今あらためて整理しておきたいのが、
「家賃は本当に掛け捨てなのか」
「購入は本当に資産と言えるのか」
という問いです。そして同時に、「それでも賃貸を選んだほうが合理的な人は誰なのか」という視点も欠かせません。
感情論ではなく、正解探しでもなく、これからの時代に合った“戦略”としての住まい選びを、一度立ち止まって考えてみたいと思います。
目次
これから家賃はどうなっていくのか
まず現実として押さえておきたいのが、これからの家賃の動きです。
結論から言えば、家賃は中長期的に見て「下がりにくく、上がりやすい構造」に入っています。

理由は単純で、建物を維持するためのコストが確実に上がっているからです。建築費の高騰に加え、修繕費、管理費、人件費、エネルギーコスト。これらは一時的な問題ではなく、構造的に上昇しています。オーナー側も、その負担をどこかで吸収しなければなりません。
結果として、更新時や再契約のタイミングで、家賃が数千円ずつ上がっていく。こうしたケースは、すでに多くの賃貸市場で見られるようになっています。
金額だけを見ると大きな変化ではなくても、10年、20年と積み重なれば、その差は決して小さくありません。
しかも家賃には「完済」という概念がありません。住み続ける限り、支払いは一生続きます。
若いうちは気にならなかった家賃負担が、将来、収入の伸びが鈍くなったときに重くのしかかる可能性もあります。
これまで
「賃貸は気楽」
「家賃は安定している」
というイメージを持っていた人ほど、この変化に違和感を覚え始めているかもしれません。
賃貸が悪いわけではありませんが、家賃はこれからも変わらず安全な選択肢であり続ける、という前提は、少しずつ成り立たなくなってきているのが現実です。
購入は本当に「資産」になるのか

では一方で、「家を買えば資産になる」という考え方は、これからも通用するのでしょうか。
答えは、「条件付きでYES」です。
不動産は、買っただけで自動的に資産になるものではありません。立地、管理状況、建物の将来性、そして出口戦略。これらを無視した購入は、資産どころか将来の負担になってしまうこともあります。
ただし、これらを意識して選ばれた不動産であれば、話は変わります。
賃貸で支払っていた住居費が、単なる「消費」ではなく、「住みながら資産を保有する行為」に変わる可能性があるからです。
ここで大切なのは、「値上がりするかどうか」だけに目を向けないことです。
価格が大きく上がらなくても、将来、売却や住み替えといった選択肢が現実的に残っているかどうか。これが確保できている不動産は、資産として十分に意味を持ちます。
つまり、購入=必ず得、ではありません。
しかし、何も残らない家賃を払い続ける選択と、将来の選択肢を残す購入を比べたとき、後者が有効になる人が確実に存在する、ということです。
賃貸が正解な人(転勤族・社宅)

ここまで読むと、「やはり購入したほうがいいのでは」と感じる人も多いかもしれません。ただし、ここで大切なのは、すべての人に購入が正解なわけではないという点です。
実際、賃貸を選び続けたほうが合理的な人は、確実に存在します。
その代表例が転勤族の方です。数年単位で勤務地が変わる可能性があり、将来の居住地を自分でコントロールできない状況では、不動産購入は大きなリスクになります。
特に、社宅制度や住宅手当が手厚い会社に勤めている場合、高額な家賃であっても自己負担が少なく抑えられるケースがあります。この場合、家賃は「掛け捨て」ではなく、会社の制度を活用した合理的な住居コストと捉えることができます。
また、仕事やライフスタイルの変化が激しく、住む場所や住まい方に柔軟性を求める人にとっても、賃貸は有効な選択肢です。
転職や独立、海外勤務など、将来の選択肢を広く持っておきたい段階では、「動ける状態」を維持すること自体に価値があります。
重要なのは、「賃貸だからダメ」「購入しないと損」という短絡的な判断をしないことです。
賃貸が正解になるのは、明確な理由と前提条件がある場合。その条件が自分に当てはまるかどうかを、冷静に見極める必要があります。
インフレ時代、家を持つことは「最大の防衛策」になる
ここで一つ、多くの人が見落としている視点をお伝えします。 それは、「今は、現金を持っているだけで価値が目減りしていく時代である」ということです。
① インフレヘッジ(物価上昇への備え)としての購入
今、あらゆるモノの値段が上がっています。建築資材も、人件費もです。
「もっと安くなるまで待とう」と考えている間に、新築価格や中古のリノベーション費用がさらに上昇し、手が届かなくなってしまう……。
今、このタイミングで家を持つということは、「将来の住居費を今の価格で固定する」というインフレ対策そのものにもなるのです。
② 家賃上昇リスクに対する「固定」という選択
冒頭でお話しした通り、家賃はこれから緩やかに上がっていく前提で動いています。
一方で、住宅ローン(特に固定金利や低金利の変動)を組むということは、「将来、物価がどんなに上がっても、自分たちが払う住居費のベースは変わらない」という安心感を手に入れることでもあります。 賃貸が「変動し続けるコスト」であるのに対し、購入は「確定した将来」を作ることにもなるのです。
③ 「時間」という資産を最大化する
住宅ローンの完済年齢を考えると、1年先送りにすることは、完済が1年遅れることを意味します。
「これから起こり得る不動産の選別」を勝ち抜くような良質な物件を今手に入れることは、低金利の恩恵を少しでも長く受けながら、現役時代のうちに資産を形成し終えるための「時間の節約」でもあります。
「高いから待つ」のではなく、「さらに上がる前に、価値が落ちないものを選んで確保する」。
これが、インフレ時代を賢く生き抜くための不動産戦略です。
もちろん、焦って『負債』を掴んではいけません。だからこそ、今このタイミングで『何が資産になるのか』を見極める眼が、かつてないほど重要になっているのです。
何も考えずに賃貸を続けるリスク

一方で、最も注意したいのが、「特に理由はないけれど、なんとなく賃貸を続けている」というケースです。
賃貸そのものが問題なのではありません。問題なのは、判断をしないまま時間が過ぎてしまうことです。
家賃は、これからも上がっていく可能性が高い。一方で、収入が同じペースで増えるとは限りません。若いうちは負担に感じなかった家賃も、年齢を重ねるにつれて、じわじわと生活を圧迫していきます。
さらに、年齢が上がると、住宅ローンの選択肢は確実に狭まります。
借入期間、借入額、金融機関の審査条件。これらは年齢と無関係ではありません。また、住宅ローンに付属されている団体信用生命保険、この存在も重要な要素です。
健康状態によっては、この団体信用生命保険に加入することができません。住宅ローン返済中に、ガンや八大疾病にかかってしまった際に、住宅ローン残高がなくなる、この団信の恩恵を受けることができなくなる前に購入する。これも選択肢の一つです。
「いつか買おう」と思っているうちに、気づけば選択肢そのものが減っている、というケースは決して珍しくありません。
賃貸でいくのであれば、「なぜ賃貸なのか」「いつまで賃貸なのか」「その先にどんな選択肢があるのか」。この3つを一度も整理しないまま時間が経つことが、将来の後悔につながります。
賃貸は逃げではありません。ただし、思考停止したまま選び続けることは、確実にリスクになる。この点だけは、強く意識しておく必要があります。
家は「正解」ではなく「戦略」で選ぶ
家賃は掛け捨てなのか、購入は資産なのか。この問いに、明確な正解はありません。
なぜなら、住まいは「商品」ではなく、「人生の一部」だからです。
大切なのは、賃貸か購入かという二択で考えることではありません。その選択が、自分の人生設計と噛み合っているかどうか。そして、その判断を、自分の言葉で説明できるかどうかです。
これからの時代、家賃は上がり、不動産価格も動きます。
金利環境も、これまでとは違う局面に入っています。
だからこそ、「なんとなく」や「みんながそうしているから」という理由で住まいを選ぶことは、ますます危うくなります。
家を買うことが正解になる人もいれば、賃貸を続けることが正解になる人もいる。ただし、そのどちらを選ぶにしても、戦略を持って選ぶことが必要です。
今の選択を、10年後の自分はどう評価するだろうか。
その問いに向き合うことが、後悔しない住まい選びにつながります。住まいは、正解を当てるものではなく、自分の人生に合わせて設計するもの。その視点を持つことが、これからの時代には欠かせません。

ただし、「家を買えばすべてが資産になる」という幻想は捨ててください
ここまで「購入は資産になる」というお話をしてきましたが、ここで一つ強い警告をさせてください。 「どんな家でも買えば資産になる」という時代は、もう完全に終わりました。
今の市場で、深く考えずに家を選んでしまうことは、資産形成ではなく「一生かけて返す、多額の借金を背負うこと」と同じです。
出口のない不動産の購入は、一生背負う負債にもなりかねないのです。
避けるべき「負債」マンションの典型例
- 「今」の安さだけで選ぶ郊外の不便な立地 「同じ予算で広さが手に入るから」と、将来人口が激減するエリアの家を選ぶ。これは、数年後に売却したくても買い手がつかず、価格を叩き売りするしかない「出口のない迷路」に入ることになります。
- 管理組合が機能していない「放置物件」 修繕積立金の不足を放置し、大規模修繕のたびに住民が揉めるようなマンション。今後、こうした物件は銀行のローン審査すら通らなくなり、資産価値は「限りなくゼロ」に近づきます。
- 身の丈を超えた「フルローン・オーバーローン」 金利上昇リスクを無視し、今の年収の限界まで借りる。家賃上昇を避けるために家を買ったはずが、金利の上昇でローンの支払いに首が回らなくなる……。これは「資産」ではなく「家族の自由を奪う鎖」です。
「負債」か「資産」か、その分かれ目はどこにあるのか
その答えは、「10年後、その家を欲しいと思う人が、今の価格以上に存在するかどうか」、この一点に尽きます。
今のインフレ時代、不動産は最高の守りになります。 しかし、それは「プロの目線で厳選された、勝ち残る物件」に限った話です。
「みんなが買っているから」「不動産屋に勧められたから」という理由で、出口の見えない物件を購入してしまい『負債予備軍』を掴んでしまうことほど恐ろしいことはありません。
「自分たちが買おうとしているのは、本当に10年後も『資産』と呼べるものなのか?」 そう自問自答して、少しでも答えに迷いがあるなら、一度立ち止まってください。
私たちは、お客様が『負債』を抱えるくらいなら、「今は買うのをやめましょう」とはっきりお伝えします。それが、お客様の人生に責任を持つエージェントとしての使命だからです。
みなさまのご相談お待ちしております!







