目次
──物価上昇時代に必要な「住居費」の新しい考え方
最近、こんな相談が増えています。
「突然、家賃を1万円上げると言われた」
「更新のタイミングで条件が変わった」
「今までずっと据え置きだったのに、なぜ今なのか分からない」

少し前までなら、
「それは特殊なケースでは?」
そう思われていたかもしれません。
ですが今、
こうした相談は決して珍しいものではなくなっています。
背景にあるのは、
一時的な値上げや一部のオーナーの判断ではありません。
時代そのものが変わり始めている。
それが、現場で日々感じている正直な実感です。
長い間、私たちは
「家賃は上がらないもの」
という前提の中で暮らしてきました。
収入は多少上下しても、
住居費は大きく変わらない。
だからこそ、
家計のシミュレーションの中でも
家賃はどこかで“固定費”として扱われてきたはずです。
しかし今、
その前提が静かに崩れ始めています。
実はこの変化、
すでに専門家の世界では当たり前になっています。
管理会社や建築会社が行う
長期の収支シミュレーションでは、
- 物価は上がり続ける
- 修繕費・人件費も上がる
- そして、家賃も緩やかに上昇する
こうした条件が、
ごく自然に織り込まれています。
つまり、
専門家側ではすでに
「家賃は上がるもの」として
未来が描かれている
ということです。

それでも、多くの人はまだ
この変化に気づいていません。
- 今の家賃が将来も続く前提
- 住み替えや購入を考えるのは、まだ先
- 何となく不安だけど、具体的には考えていない
もし、心当たりがあるなら。
この記事は、きっとあなたのためのものです。
これは不安を煽る話ではありません。
ですが、
前提をアップデートしないまま
人生設計を組み立ててしまうことのリスク
については、
一度立ち止まって考える価値があると思っています。
物価が上がるのに、家賃だけ上がらないという前提
ここ数年、私たちの生活を取り巻く環境は大きく変わりました。
食品、光熱費、ガソリン。
建築資材や修繕費、人件費。
どれを取っても、「以前と同じ価格」で済んでいるものの方が少ないはずです。

それでも多くの人は、
どこかでこう考えています。
「家賃だけは別」
「住居費はそう簡単に上がらない」
ですがこの考え方は、
現場の感覚としては、すでにかなり無理が出始めています。
なぜなら、賃貸住宅もまた
物価上昇の影響を強く受ける商品だからです。
- 建物は年数とともに確実に劣化する
- 修繕費や設備交換費は年々上がる
- 管理に関わる人件費も上昇している
- さらに金利も、長い上昇局面に入りつつある
これらすべてを吸収したまま
家賃だけを据え置き続けるのは、現実的ではありません。
実際、管理会社や建築会社が作成する
長期の収支シミュレーションでは、
- 家賃は数年ごとに見直される
- 少なくとも物価上昇率程度は織り込む
こうした前提が、
ごく自然に組み込まれています。
ここで大事なのは、
「必ず大幅に上がる」という話ではないという点です。
毎年急激に上がるわけではない。
けれど、下がらず、緩やかに上がっていく前提で
すでに未来が設計されている。
この変化が、静かに進んでいるのです。
これまで家賃が上がらなかったのは、
日本が長いデフレの時代にあったからです。

オーナーや管理会社が、
無理をしてでも据え置きを続けてきた側面もあります。
しかし、
物価が上がり続ける今の環境では、
その前提をいつまでも維持することはできません。
「家賃は固定費」という感覚そのものが、
少しずつ現実とズレ始めている。
ここを見誤ると、
家計や人生設計に思わぬ影響が出てくる可能性があります。
管理会社が行う「シミュレーション」とは何を見ているのか
管理会社や建築会社が行う
いわゆる「シミュレーション」とは、
単に今の家賃がいくらか、という話ではありません。
私たち管理会社側が見ているのは、
これから先、物件を「維持し続けられるかどうか」
その一点です。
たとえば、
- 修繕費は、今後どの程度上がっていくのか
- 管理に関わる人件費は、将来どこまで増えるのか
- 金利や資材価格の影響は、どのタイミングで効いてくるのか
こうした要素を、
5年、10年、場合によっては20年先まで
前提条件として組み込んでいきます。
ちなみにうちの会社ではこうした収支シュミレーションのソフトを使い、オーナー様に適宜提案させていただいています。

シミュレーションは「楽観的」に作られていない
ここで誤解されがちなのが、
「管理会社は、家賃を上げるための理由を作っているのでは?」
という見方です。
ですが実際は、その逆です。
多くのシミュレーションは、
かなり保守的に作られています。
- 急激な家賃上昇は想定しない
- 一気に条件が変わる前提は置かない
- それでも成り立つかどうかを見る
それでもなお、
「このまま家賃が据え置きだと、どこかで無理が出る」
という結論に近づいてしまう。
これが、今の現場のリアルです。
家賃は「上げたいから上げる」ではない

ここは、ぜひ知っておいてほしいポイントです。
家賃の見直しは、
感情論や都合の話ではなく、
「維持できるか、できないか」
という判断の結果であることがほとんどです。
- 建物をきちんと管理できるか
- 修繕を先送りせずに済むか
- 結果として、住環境を保てるか
これらを守るために、
やむを得ず家賃の見直しが検討されるのです。
つまり、
家賃の上昇は、突然の出来事ではなく、
ずっと前から計算の中に存在していた未来
だということです。
問題は「知らないまま迎えてしまうこと」
本当の問題は、
家賃が上がることそのものではありません。
問題なのは、
- その前提を知らないまま
- 家計や人生設計を組み立て
- ある日突然、現実に直面してしまうこと
です。
「そんな話、聞いていなかった」
そう感じてしまうのは無理もありません。
ですが、
管理会社や建築会社の世界では、
すでにその前提で未来が描かれている。
この認識のズレこそが、
多くの困惑や不安を生んでいる原因なのです。
では、この先に何が起きるのか
ここまでを踏まえると、
次に考えるべきことが見えてきます。
もし、
- 家賃が緩やかに上がっていく前提が続くなら
- それに耐えられる家計なのか
- 将来の住み替えや購入に、どんな影響が出るのか
次の章では、
家賃の変化が「不動産価格」や「選択肢」にどう影響していくのか
その点を整理していきます。

家賃が上がると、不動産価格にも影響が出てくる
ここまでで見てきたように、
家賃は「気まぐれに上がるもの」ではなく、
長期のシミュレーションの中で、すでに前提として組み込まれている
そんな存在になりつつあります。
では、この流れが続いた場合、
次に何が起きるのか。
多くの人が見落としがちなのが、
家賃の変化は、不動産価格にも影響する
という点です。
家賃と不動産価格は、実はつながっている
不動産の価格は、
「今いくらで売れるか」だけで決まっているわけではありません。
とくに賃貸物件や、
将来的に賃貸として使われる可能性のある不動産では、
- どのくらいの家賃が見込めるのか
- その水準が将来も維持できそうか
こうした視点が、
価格に影響してきます。
家賃が上がる
↓
収益性が下がりにくくなる
↓
「安く売る必要がなくなる」
この流れが起きると、
不動産価格は下がりにくくなる、
つまり、不動産相場は押し上げられることになります。

「いつか買えばいい」が通用しなくなる可能性
ここで一つ、
立ち止まって考えてみてほしいことがあります。
もし今、
- 家賃は今後も大きく変わらない
- 買うのは、もう少し先でいい
そんな前提で考えているとしたら。
数年後、
- 家賃は今より高い
- それに連動して、不動産価格も上がっている
という状況になっていた場合、
選択肢そのものが減っている
可能性があります。
もうすでにその時代は始まっていますよね。
去年買っとけばよかった。そんな声を聞くことが増えています。
これは
「必ずそうなる」という話ではありませんが、
そうなる可能性を前提に考える必要がある時代
に入っている、ということです。

住居費は「今」だけで考えない
大切なのは、
今の家賃や今の購入価格だけを見ることではありません。
- 5年後
- 10年後
- その時、自分はどんな暮らしをしていたいのか
その中で、
- 家賃はどうなっていそうか
- 住み替えは現実的か
- 購入という選択肢は残っているか
こうした視点で、
住居費を「流れ」で考えることが重要になってきます。
正解はひとつではない
ここまで読むと、
「じゃあ、買った方がいいのか」
「賃貸は危険なのか」
そう感じるかもしれません。
でも、
この話の結論はそこではありません。
大切なのは、
- 家賃は上がらない、という前提を疑うこと
- 不動産価格も固定ではないと理解すること
- その上で、自分に合った選択を考えること
つまり、
判断の前提をアップデートすることです。

あなたの家計シミュレーションは、本当に大丈夫ですか?
ここまでで見てきたように、
- 家賃は、上がらない前提では考えにくくなっている
- その変化は、不動産価格や選択肢にも影響してくる
となると、
次に向き合うべきなのは、とてもシンプルです。
「その変化に、あなたの家計は耐えられるのか?」
ということです。
多くの家計は「今」で止まっている

家計のシミュレーションというと、
多くの人がこんな前提で考えています。
- 今の家賃
- 今の収入
- 直近の生活費
もちろん、それ自体は間違いではありません。
ですが問題は、
将来の変化が、ほとんど織り込まれていない
という点です。
- 家賃は今後も同じ
- 住居費は固定
- 大きく変わるのは、教育費くらい
もし、こうした前提で組み立てているとしたら、
それは少し楽観的かもしれません。
家賃が少しずつ上がる、という前提を置く
ここで、極端な話をする必要はありません。
毎年大幅に上がる、
そんな想定をする必要もない。
ですが、
- 数年ごとに、じわっと上がる
- 気づいたら、数千円〜1万円違っている
このくらいの変化は、
十分に現実的なラインです。
その変化が、
- 5年
- 10年
と積み重なったとき、
あなたの家計にどんな影響が出るのか。
ここを一度、
冷静に見直してみる必要があります。

「住居費が上がる」と、他が削られていく
家計には、余白があります。
ですがその余白は、
無限ではありません。
住居費がじわじわ上がると、
- 貯蓄ペースが落ちる
- 余裕資金が減る
- 将来の選択肢が先送りになる
こうした変化が、
静かに起きていきます。
怖いのは、
一気に苦しくならないことです。
気づいたときには、
「なんとなく余裕がなくなった」
「前より選べなくなった」
そんな状態になっているケースが少なくありません。

賃貸か、購入か、ではなく
ここでよく聞かれるのが、
「じゃあ、買った方がいいんですよね?」
という問いです。
ですが、この章でお伝えしたいのは、
賃貸か購入かという“結論”そのものではありません。
大切なのは、
賃貸を続けるにしても
購入を考えるにしても
同じ前提条件で、ちゃんとシミュレーションできているか
という点です。
たとえば、
- 家賃は今後も変わらない、ではなく緩やかに上がっていく前提
- 物価も、今の水準が続くのではなく上がっていく前提
- 収入も、必ず右肩上がりとは限らない前提
こうした条件を揃えたうえで、
どちらが自分の人生に合っているのかを考える。
それが、
今の時代に必要な判断の仕方だと思います。
ただ、どこかのタイミングで購入、そう考えているなら、
これから先を考えると、今が一番安いタイミング、
そうなることも十分にあり得るわけです。
「不安」ではなく「準備」に変える
この記事をここまで読んで、
少し不安になった人もいるかもしれません。
でも、不安になる必要はありません。
大切なのは、
- 前提を知ること
- 早めに整理すること
- 自分の立ち位置を把握すること
それができれば、
住まいの選択は
怖いものではなくなります。

大切なのは「今すぐ決めること」ではない
ここまで読んで、
「じゃあ、どうすればいいのか」
そう思った方もいるかもしれません。
ですが、
大切なのは今すぐ答えを出すことではありません。
- 今の前提が、少し古くなっていないか
- 家賃や住居費を、変化するものとして考えられているか
- 将来の選択肢を、無意識に狭めていないか
まずは、
ここを一度立ち止まって整理すること。
それだけで、
住まいに対する不安はかなり減ります。
大切なのは、
- 同じ前提条件で考えているか
- 将来の変化を無視していないか
- 自分の人生設計と、ちゃんと噛み合っているか
この視点を持ったうえで選ぶこと。
それができていれば、
住まいは「不安の種」ではなく、
人生を支える土台になります。
住まいの判断は、ひとりで抱え込まなくていい
家賃、購入、住み替え。
これらはどれも、
金額が大きく、先が長い判断です。
だからこそ、
- 数字だけで判断しない
- 一時的な情報に振り回されない
- 誰かと一緒に整理する
この姿勢が、とても大切になります。
「今は買うべきではない」
「今のまま賃貸でいい」
そうした答えも、
状況によっては立派な“正解”です。
前提をアップデートする。それが第一歩
家賃は上がらない。
住居費は固定。
そんな時代は、
少しずつ終わりを迎えています。
だからこそ必要なのは、
焦って決断することではなく、
前提をアップデートし、
自分の立ち位置を正しく知ること。
そこから先の選択は、
必ず見えてきます。
この記事が、
そのきっかけになれば嬉しいです。







