住宅ローン中の家、黙って貸すとヤバい!?—思わぬ落とし穴と“救済の選択肢”とは
目次
“とりあえず貸す”は危険のはじまり

「離婚するので、今の家を誰かに貸したい」
「ローンの返済がきつくなってきたので、しばらく人に貸して家賃収入でカバーしたい」
「転勤が決まったけど、せっかく買った家だから手放したくない」
そんな相談が私たちのもとにも届きます。
特に昨今の情勢、物価上昇や金利不安、ライフスタイルの変化によって、住宅ローンを組んで購入したマイホームを「手放さずに賃貸に出す」選択肢を検討する人が増えてきました。
ですが、ちょっと待ってください。
その行動、契約違反や重大なリスクに繋がる可能性があるんです。
ローンを組んでいる本人たちに意外と知られていないのが、住宅ローンには「本人居住が前提」という制限付きのローンが多く、勝手に人に貸すことが禁止されているという事実です。
このブログでは、
- なぜ“住宅ローン中の賃貸化”が危険なのか?
- 実際に起きたトラブル事例
- それでもどうしても貸したい場合の対処法
- そして、いまだからこそ「売却」が有効な理由
これらを掘り下げてお伝えします。
住宅ローンは「自分で住むこと」が大前提

住宅ローンと聞くとただ単に「家を買うためのローン」と思われがちですが、正確には“自己居住を目的とした”家を買うためのローンです。
そのため、住宅ローンには以下のような優遇措置が設けられています
- 一般的なローンよりも低金利
- 住宅ローン控除(最大13年間、所得税控除)
- 住宅金融支援機構の「フラット35」など固定金利制度
- 各自治体の支援制度(金利補助など)の対象にもなる
これらの恩恵を受けられるのは、“自分が住むことを前提”に購入していることが条件です。
住宅ローンには、「本人が居住すること」を条件にしたものが多く、無断で第三者に貸し出すと、契約違反と判断されるケースがほとんどです。
特に民間の銀行やフラット35では、“居住用であること”が融資の大前提。
金融機関に無断で賃貸に出す行為は、明確な契約違反として、一括返済を求められる可能性すらあります。
✅ 一括返済リスクもある
金融機関に黙って賃貸に出した場合、「契約違反」としてローン残債の一括返済を求められるケースも出てきます。
仮にローン残高が2,000万円残っていたとしても、それを即時返済しなければならないという事態に陥ったらあなたはどうしますか?
これは極端な例ではなく、実際に発生しているケースです。
「不動産会社が貸してくれたから大丈夫」は通用しない
このリスクについて、多くの方がこうおっしゃいます。
「でも、不動産屋さんに頼んだら“貸せますよ”って言われたんですけど…?」
実はここが大きな落とし穴なのです。
住宅ローンの契約内容まで確認しない不動産会社(特に賃貸仲介会社)が多いのです。
「賃貸募集してくれ」と言われれば、所有者の指示通りに物件広告を出すのが仕事だと思っているケース、危ないと分かっていても目の前の売上を優先してリスクを説明しないケース、そもそもそのリスクについての知識を持ち合わしていないケースもあるのです。
不動産会社自体は、ローン契約の内容に違反するかどうかまでは、調べる義務も責任も基本的には負いません。
でも、これも実務にどうなのかってところですが、賃貸の契約をする場合でも不動産登記簿を取得し、その内容を転載します。
抵当権の有無、どの金融機関で借りているかもそこで把握することができます。
つまり、抵当権の内容を見れば
『これ、住宅ローンで借りているな』
ってことが分かるのです。
そこが分かれば、当然そこに潜むリスクについても想像できます。
なので、住宅ローンを組んでいる物件が安易に賃貸市場に出回るのは、不動産業者のモラル、浅はかな知識にも起因しているわけです。
とはいえ、「オーナーの責任でやってくださいね」というスタンスの業者が多いのも事実です。
ただ、そのリスクは貸し手側に返ってくるということを知っておきましょう。

✅ 火災保険も適用外に?
さらに盲点となるのが保険。
住宅ローンに紐づいて火災保険に入っていても、「自己居住」が条件になっていることがあります。
🔍 火災保険には、以下のような前提条件が組み込まれているケースがあります
- 契約者本人とその家族が居住していること
- 居住形態(持ち家・自宅用)として契約されていること
- 他人に貸す場合は「賃貸用」契約に切り替える必要があること
- 家族構成や住人の変更があった場合は、保険会社に申告義務があること
もし、無断で賃貸に出し、保険契約の「使用目的」や「居住者情報」が実態と異なっていた場合…
✅ 火災が発生しても保険金が下りない可能性があります
✅ 被保険者と実居住者が異なることで、補償対象外になるリスクもあります
✅ 水漏れ・火災等で借主が損害を被った際に、賠償責任保険が適用されないケースも
無断で第三者に貸していると、火災が起きても保険金が出ないケースも発生します。
いざというときに
- 銀行のローンは残ってる
- 家は燃えた
- 保険は下りない
…という最悪のシナリオも起こりうるのです。
✅ 解決策:賃貸に出すなら、保険も必ず見直そう
- 使用目的の変更申請(居住用 → 賃貸用)
- 借家人賠償責任保険への加入
- 借主にも火災保険加入を義務付ける(契約条項で明記)
保険は“いざというときの命綱”。
知らずに契約違反状態にしてしまうことで、最悪「すべて自腹」という結果になりかねません。
「どうしても貸したい」ときの正しい手順
では、離婚・収支の悪化・転勤など、やむを得ず住み続けられない事情があるときはどうすればいいのでしょうか?
ここで大切なのは、勝手に貸さず、正しく手続きすることです。
金融機関に事前相談
まずは、住宅ローンを組んでいる銀行・金融機関に相談することが最優先です。
事情によっては、以下のような対応が可能なケースもあります:
- 一時的な賃貸利用を許可してもらう(例:転勤、別居中など)
- ローンを「投資用ローン」や「事業用ローン」に切り替える
- 違約とならないよう、再契約または特約をつける
ただし、金利は上がることが多く、条件も厳しくなります。
✅ 一時的な賃貸利用の「例外承認」が得られるケースもある
金融機関によっては、やむを得ない事情がある場合に限り、一時的に第三者へ賃貸することを“特例で認める”運用をしていることがあります。
主な例
- 転勤(国内・海外)で家を空けるが、いずれ戻る予定がある
- 離婚や別居などで、暫定的に誰も住まなくなる
- 親の介護・看病で地元へ戻るなど、生活拠点が一時的に変わるケース
▶ この場合、金融機関に「賃貸利用申請書」などの提出を求められることがあります。
▶ 条件付きで認められた場合でも、「〇年以内に戻ること」や「サブリース不可」などの制約がつくこともあります。
🔺注意
- 特例はあくまで“例外扱い”なので、黙って貸してしまった後では後の祭り
- 許可が下りた場合でも、火災保険や管理形態の見直しは必須
✅ 「投資用ローン」や「事業用ローン」への借り換え
住宅ローン契約のまま貸すことが認められない場合、
代替策として「投資用ローン」や「賃貸事業ローン」などへローン契約の切り替え(借り換え)を求められることがあります。
📌 この場合の特徴:
項目 | 住宅ローン | 投資用ローン(アパートローンなど) |
---|---|---|
金利 | 低め(1%前後) | 高め(2〜4%台が一般的) |
審査基準 | 年収重視、自己居住前提 | 賃料収入や物件価値重視 |
借入年数 | 最長35年 | 短くなることも(15〜25年) |
諸費用 | 比較的安い | 保証料・手数料が高め |
▶ 金利が上がる分、返済額も上がる
▶ ただし、「賃貸に出す」ことに適した形になり、堂々と賃貸運用ができる
💡つまり、「賃貸収益でローン返済を回す」という構造に転換するための正式な手続きとなります。
✅ 違約とならないように「特約付き再契約」や事後承認も検討
金融機関によっては、下記のような中間対応を提案されることも:
- 今後数年は返済実績を積んだうえで、再度相談してください
- 契約書に「一定条件下での賃貸を認める」旨の特約を付け加えることで容認
- 担保評価額の見直し or 保証人の追加で対応
「今後、本物件は転勤に伴う一時的な賃貸利用とし、3年以内に契約者本人が再居住することを条件とする」
とか、
「第三者への転貸を行う場合は、事前に当行の承諾を得ること」
「万一、継続的な賃貸運用を行う場合には、当行所定の投資用ローンへの切替を協議すること」
こんな感じで、”黙って貸すのはダメだけど、条件次第ではOK”という一種の“緩和措置”を付ける形。
このあたりは銀行の内部規定や融資実行時の担当者によっても変わってきます。
だからこそ、“一律で貸してOK”なんてことはないので、きちんと個別交渉することが肝心です。
✅ 忘れてはいけない:金融機関は「契約違反には厳しい」
- 最近は「信用リスクの管理」がより厳格化しており、住宅ローンの目的外使用には敏感
- 特に団信付きローンやフラット35は、条件違反が即「契約解除」の対象となりうる
- 金融庁の監査指導もあるため、行員が見逃してくれる…という時代ではない
過去にフラット35を利用した不正融資事件などもありました。
最初から賃貸することを目的としているのに、フラット35などの住宅ローンを利用し、超長期かつ低利の融資を受け、その支払額より高い賃料を得て、
あたかも、それが正しい不動産投資の形であるように謳って不正融資を繰り返していた事件です。
私たちのもとにも、この手の相談が数多く寄せられました。
TV等でニュースを見た購入者からの相談です。
『私、やってしまったかもしれません‥』
『このことが会社にバレてクビになったらどうしようと考えて、夜も寝れなくなっています‥』
私たちが解決できる方法としたら、上記のようなアドバイスをすること、そして現状のままで売却し、この形を早急に解消するお手伝いをすることです。
ただ、一筋縄でいかないケースもあるんですが‥
知らなかったでは済まされない!実録トラブル事例
実際に起きた「住宅ローン中の賃貸」にまつわるトラブルは少なくありません。
以下は、不動産業界で実際にあった(もしくは裁判記録にも見られる)典型的なケースです。

■ ケース1:一括返済を求められたAさん
Aさんは、住宅ローンを組んで購入した新築戸建を、離婚を機に誰も住まなくなったため、「とりあえず貸し出す」ことに。
知り合いの不動産会社に相談し、特に深く確認されることもなく、すぐに賃貸募集が開始され、借主も決まりました。
ところが、数か月後、金融機関が偶然近隣調査を行った際に「第三者が住んでいる」ことが発覚。
住宅ローン契約に反していることから、Aさんにローン残債2,100万円の一括返済が求められ、対応できずに物件は競売に。
借主は強制退去に巻き込まれ、Aさんには信用情報(いわゆるブラックリスト)への登録も。
■ ケース2:火災保険が下りなかったBさん
Bさんは、住宅ローン契約時に加入した火災保険のまま、ローン返済が厳しくなり自宅を賃貸に出すことにしました。
貸していたアパートでボヤ騒ぎがあり、火災保険の請求を行ったところ、保険会社から「契約上の使用目的と異なる」として、保険金の支払いを拒否されました。
結果、修繕費約120万円は全額自己負担。
しかも火元は借主側であったため、賠償請求のトラブルにも発展し、管理会社も巻き込んで裁判寸前に。
■ ケース3:借主との信頼関係が崩壊したCさん
Cさんは、知人から「一時的に住まわせてほしい」と頼まれ、住宅ローン中のマンションを無断で賃貸に出しました。
その後、ローンの返済が滞り、金融機関からの督促が届くように。
Cさんは滞納を隠し続けましたが、借主のもとに競売開始通知が届き、借主は激怒。
「事情を知らされずに住まされた」としてCさんを訴え、慰謝料・引っ越し代等の請求へ。
🔺共通する教訓
- 「バレなければ大丈夫」は通用しない
- 金融機関や保険会社は、使用実態を把握する手段を持っている
- 借主にとっても“普通の契約じゃなかった”ことは不利益になりうる
- 結果として、「貸主・借主・仲介業者」全員がトラブルに巻き込まれることも
このような事例は他人事ではありません。
いつ自分の出来事として起こるかもしれない出来事なのです。
今の相場なら「売却」が最良の選択かもしれない
ここまで読んで「自分も危ないかもしれない」と感じた方もいるかもしれません。
でもご安心ください。
実は今、“売ったほうが得をする”人が増えているのです。
📈 住宅価格が“高止まり”または“上昇中”の今がチャンス
ここ数年、全国的に住宅価格は上昇傾向。
特に都市部や利便性の高い地域は、
- コロナ明けの需要回復
- 建築コストの上昇
- 新築マンション価格の高騰
- 外国人需要(インバウンド需要)の大幅拡大
などを背景に、「買ったときより高く売れる」状況が生まれています。
✅ もし今売れば…
- ローン残債より高く売れる → 自己負担ゼロで完済可能
- 信用情報に傷がつく前にリセットできる
- 現金が手元に残る可能性も(繰上返済+余剰分)
- “再スタート”の準備期間にもなる
💡 「貸す」より「売る」が賢明なケースとは?
状況 | 賃貸より売却を勧めたい理由 |
---|---|
離婚 | 財産分与で揉める前に現金化 |
収支悪化 | 長期的に返済できないなら早めに資産処分を |
空き家状態が長期化 | 維持コスト+リスクが増える一方 |
今の価格が購入時より上 | 利益確定できるうちに行動を |
不透明な未来より、「いまの価格」で売却して一度リセットする方が、
後悔しない選択になることもあります。

「とりあえず貸す」はもはやリスクしかない
✅ ローン契約に反する“無断賃貸”は契約違反
✅ 一括返済・保険不適用・競売などの深刻なリスク
✅ 借主にも損害が及び、裁判や信用失墜の恐れも
✅ 実は「売却すればむしろプラスになる」こともある
これらのトラブルは、知識と事前相談でほとんど防げるものばかりです。
「住めなくなったから貸そう」は自然な発想ですが、住宅ローンには“ルール”があります。
そのルールを無視してしまうと、資産どころか人生設計そのものが狂ってしまうリスクもあるのです。
行き詰まる前に、「プロに相談する」という選択を。
RE/MAX L-Styleでは、住宅ローン中の不動産に関するご相談を数多くお受けしています。
「売るべきか、貸すべきか、それとも別の道があるのか?」
一人ひとりの事情に合わせて、最良の出口戦略をご提案いたします。
📩 お気軽にLINEまたは専用フォームからご相談ください。

最後に―不動産会社へ従事する人たちへ
賃貸仲介会社は、住宅ローン契約の中身まで確認する義務はありません。
ですが、オーナーから「住宅ローン中の家を貸したい」と相談された際、
「そのまま貸してOKです」と安易に受けてしまうと、後にトラブルに巻き込まれるリスクもあります。
特に、金融機関に無断で貸し出したことが原因で差し押さえや競売となり、借主から損害請求された場合などは、
「説明義務違反」や「善管注意義務違反」として責任を問われる可能性もゼロではありません。
プロとしては、住宅ローン中の不動産を扱う際には、事前にオーナーに確認を取り、必要に応じて金融機関との調整を促すことが重要です。
私たちのモラル、仕事への取り組みが、こうした情報弱者である被害者を減らすきっかけになってくれればと思っています。
