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  3. エージェントは家を売る人ではなく、ライフプランを提案する人になるべき
2022年2月19日

一昔前家売るオンナというドラマがありました

家売るオンナ

どんな家でも私にかかれば、売れない家はない

こんなキャッチフレーズのもと、じゃんじゃん家を売りまくるそんなドラマでしたが、私的にはこのキャッチーなフレーズよりも、いつもその売り方のストーリー性に注目して視聴していました。

ただ高い家を売るだけではなく、毎回買主さん、売主さんにもドラマがありました。

その名の通り、ドラマ、テレビドラマですから、ストーリーがあるのは当たり前なんですが。(笑)

何となく今までの自分の不動産営業のやり方、考え方に近しいものがあったため、楽しみにしていたドラマの一つでした。

私は元々この業界に入った時には家を売る仕事、建売屋さんから始まったのですが、正直その物件が高いのか安いのかも分からない素人でしたし、その会社が売っている商品しか知らなかったため、近隣相場も分からない状況で営業を始めました。

時代がよかったのか、私が営業に向いていたのか(笑)分かりませんが、とにかくそんな状態でも売れました。

ただ、自分自身の達成感はなかったんですよね。

右も左も分からない状態でスタートした不動産営業でしたが、兎にも角にも知識を身につけるため本、不動産や建築の専門書を読み漁りました。

難しい専門用語を駆使しながら、営業テクニックの本も読みながら、売るために努力はしました。

でもね。

面白くないんですよ。

もちろん売れればお給料に反映しますし、褒められます。

でも満足感は得られませんでした。

なぜ?

家をほしいと思って買いに来るお客さんに、ただ家を売るだけ、いくらまでローンを支払えるか計算して、その予算に合わせた物件を提案するだけ。それだけだったからです。

売った家より安い家を見つければ、あの家でよかったのかと自問自答し、本を読み知識を身に付け、経験を積めば積むほど、経験がない状態で売ったお客様に対して申し訳なさを感じる。

そんな思いもあり、身の丈にあった賃貸仲介の仕事へと転職しました。

その時まだ自分自身が23歳になったばかりという時期でもあり、お客さんの年齢層ともちょうど合致しており

『自分だったら、こんな家に住みたい』

『彼女と住むなら、こんな家に住みたい』

『結婚したらこんな家に住みたい』

と、自分が住みたい家、自分がお客さんの立場ならこんな家を選ぶという視点で物件提案を行っていきました。

年齢層も近い分、お客さんの気持ちが理解しやすかったのかもしれません。

そこには、不動産知識もテクニックもありません。

しかも、自分が住みたい家を勧めているわけですから、きっと楽しそうにうれしそうに話していたんでしょうね。

決まりました。たくさん決まりました。

テクニック的な要素でいうと一つだけ。

自分が話をしているのはウソでも営業でもなく、自分が思っている真実だということを分かってもらうために、話を聞いてもらえる下地を作ることだけです。

そのためには、まずお客さんの話を聞くことです。

 

初期面談(ヒアリング)

相続相談

お客さんの家族構成(単身入居か否か)、収入、通勤先はもちろんのこと、独身の男性なら今彼女がいるのか、一緒に住もうとしてないのか、結婚を考えたりしていないか。

ご夫婦、新婚さんなら、将来の家族構成も含め、その先にはいつか家を買いたいのか、ずっと賃貸のまま過ごそうとしているのかなど、将来のビジョンをお聞きしたりするところから始めていました。

今と違い、いつかは持ち家、マイホームを持つのがステイタスという時代でしたから、賃貸は仮住まいなのか?

ずっと賃貸で住むつもり。でも、いい部屋を転々としたいのか、それとも安い部屋で長く住み続けたいのか、そんな話を雑談も交えながら長々とお話していました。

もちろん、こんな話を聞きたい人ばかりではありませんから、中には

『そんな話はいいから、とりあえず物件を紹介して』

こんなお客さんもいます。

そういったお客さんには、スピーディに物件だけを紹介する。気に入ったら決めてくれるし、気に入らなかったら決めてくれない。

そうしたお客さんが求めているのは、不動産のアドバイザーではなく物件だからです。

そういう人たちには物件紹介マシーンと化します(笑)

お客さんが何を求めているか?

そのオーダーに応じるのが自分の仕事だと思っていました。

ただ、こういったお客さんが続くとテンションが下がります。

だって、自分じゃなくてもいいじゃん。

こう思ってしまうからです。

でも、時代の流れか、その頃はインターネットで集客する時代へと突入する過渡期でした。

地元の不動産屋さんに飛び込み、いい物件を探してくれる、自分に合った物件を探してくれる、そういう不動産屋さん、営業マンを探す時代から、自宅で物件情報を閲覧しターゲットを絞ってアポを取る時代。

たしかにお客さんにとっては便利な時代になったのかもしれません。

たまたま出会った営業マンの優劣でなく、平均値の物件を誰でも手に入れれる時代になったのですから。

この頃、その賃貸仲介の不動産会社に入り7年が経過していました。

楽しかった時代は過ぎ去り、その後の自分の未来を想像するようになっていきます。

自分が楽しくない仕事をしていると、仕事は【お金を稼ぐための道具】と化してしまいます。

そうした仕事の在り方に疑問を感じてしまい、転職することになりました。

 

転職は自身のステップUPのため

次に行った会社もまた賃貸系の会社でした。

ただそこでは、集客から経費計算、単月の収支管理まで全て任せてもらえました。

収支が赤字なら給料は0、どころか収支が赤字ならお金を持っていく、究極の歩合給です。

会社の代表は私ではなく社長でしたので、最終的な責任は社長が負ってくれていたのですが、起業の真似事みたいなものを経験させていただきました。

その会社、地元で20年も存続していた会社だったので、多くの地主さんからの信頼を得ていました。

取引していた物件はほぼ個人家主さんです。

地主さんといっても多種多様です。

気前のいい家主さんもいれば、重箱の隅をつつくような細かい家主さんもいました。

リフォームも一律ではありません。

『この部屋ちょっとしか住んでないからそのまま貸そうと思って」』

と言って、壁紙の汚れを拭き取っていきます。

ただ、リフォーム代かかってないから礼金は安くでいいよ。

こんな話もしてくれる家主さんもいました。

賃貸管理と大家業について少し学べたのは、この会社に勤めた数年間があったからだと思います。

ただ管理業をしていると、一方的に借主さん側だけの意見を押し通すことに疑問を感じるようになります。

貸す側と借りる側の利害関係が一致しないことも少なからず発生します。

入居者さんに気持ちよく住んでいただく環境を作るためには維持管理費がかかりますし、安く借りていただこうとすると、家主さん側の収入が減ることになります。

これは、売買の買主さんと売主さんとの関係と同じです。

ここで積んだ経験で今でも役に立っていることは、調整力です。

私たち不動産仲介業は、人と人との間に立つ仕事、仲立ちする仕事です。

仲人さんと同じです。

一方的な意見だけ押し付けても夫婦間がうまくいくことはありませんよね?

それと同じで、借主さんの都合だけ、貸主さんの都合だけを押し付けることが正義だと思っていません。

例え家賃が安く貸してもらえたとしても、入居後の対応が良くなくては住み心地のいい部屋にはなりませんので。

今は、家主さんと顔を合わせることも少なくなりましたし、入居者同士であいさつすることも少なくなりました。

でもその当時はまだそうでもなかったのです。

マンションを毎日掃除する大家さん、家を出る際に軽く会釈して

『行ってきまーす』

この何気ない日常が生活の治安を守ります。

マンション内に外部の人が出入りしていることにもすぐ気付きますし、ストーカー気質のある人やトラブルメーカーになる可能性のある入居者はこういうマンションを選びませんし、マンション内の治安が維持できたものです。

家主さんも管理会社さんも味方に付けていたほうが、気持ちよく安全に生活できることもあるのですよね。

毎月1千円、2千円家賃が安いより、安心して生活できる部屋の方が良くないですか?

古いエアコンを

『壊れるまでは使ってほしい』

と言われるより、

『どうせもう長持ちしないから、この際新しいエアコンに変えてあげるよ』

これだけで毎月の電気代が数百円変わるかもしれません。

今の賃貸管理は完全にシステム化されてきました。

管理会社の人間もマニュアル通りの行動しかしてくれません。

クロスの汚れ1㎡あたり〇〇円、床の傷一か所につき〇〇円。

このシステム化がいい面もあれば、逆に融通の利かない面も出てくるので考えものです。。。

とにかくこの時期、管理会社としての立場と、オーナーさん側の立場、いろいろな経験ができた時期でした。

まさに自分自身がステップアップできる環境で仕事ができた、そのことが独立開業への一歩となっていたのです。

 

独立したきっかけは・・・

この会社で働いていた時、正直独立など考えたことがありませんでした。

いろいろなことにチャレンジできる環境でしたし、やればやるほどリターンがある報酬形態(今のエージェントみたいな形ですね)でしたので、一生ここで仕事をしているもんだと思っていました。

ただ一つネックがあるとすれば通勤距離でした。

前の会社を退職しようと考えていた時期に、実家の近くで家を購入していたのです。

私の実家は神戸でした。

阪神大震災に見舞われ、実家は倒壊しました。

その後両親が移り住んだのは明石の方で、不動産の仕事を辞め神戸方面で転職しようと考えていたので購入したのですが、購入後にこの仕事のオファーがあり、購入したばかりの家をどうすることもできずに通っていたのでした。

その通勤時間は片道1時間半。。。

毎日電車に揺られ通勤していました。

毎日3時間も電車に乗っていたので、宅建の勉強は十二分にできそのおかげで合格できたのですが、ちょっと残業をして帰ったら深夜0時、朝は6時半ころには起床し出社、こんな生活が続いていたので、家族と過ごす時間がほぼなく、夫婦間は悪化し離婚することになります。

離婚後は大阪に引越し、10年振りの一人暮らしを始めるのですが、その半年後、長男が一緒に住みたいと言い出し2人で新生活を始めるのですが、ここでもまた問題が。。。

小学2年生で転校してきましたが、転校生ということで周りの子どもたちと馴染めず喧嘩ばかり。

毎日のように学校に呼び出されました。

父子家庭だったのでもちろん自分が出向かなくてはいけず、学校や相手の親元に謝りに行く日々。

当然その間は仕事を投げ出していかなくてはならず、会社に迷惑をかけていました。

その当時の社長もストレスを感じていたのでしょうが、こちらもストレスが溜まっていたのか衝突してしまいます。

自分で会社を経営すれば、誰にも迷惑を掛けずに済むし一人でやろう。

こんなきっかけで独立することになります。。

何の展望も、何の夢もない独立理由でしょ?

笑ってしまいますよね?

※今から18年前、前の会社を設立した時の話です。

でもこの時気付いたのは、家の購入をきっかけに家族が崩壊してしまったこと、もちろん転職も大きな理由の一つですが、家を売るに売れない状況を作ってしまったことです。

頭金をほとんど入れずに購入した家だったため、残債以下の価格で家を売却することをためらってしまったのです。

最終的に大きな借金を残した状態で家を売却するのですが、その前に決意していれば家庭崩壊にはつながらなかったかもしれません。

住宅購入とライフプランはセットなのです。

 

ライフプランニングの重要性

ライフプランを立てずに購入してしまったこと、それが大きな失敗を招きました。

今なら自分にこうアドバイスをします。

『転職する気持ちがあるなら、家を購入してはダメ』

『定職があるうちならローン組めるから、今の間に買っちゃえ、この選択肢は最悪の選択肢ですと』

余裕があり、頭金を潤沢に入れれる場合なら別かもしれません。

転職に備え生活費を抑えるために購入するならまだ考えてもいいかもしれませんが、それでも転職前提なのに住宅ローンを組むことは住宅ローンの定義に抵触します。

継続かつ安定した収入が見込める人に低利で貸し出すのが住宅ローンだからです。

今では自分の実体験を元に、まずライフプランを立てること、そしてそのライフプランに沿って購入を検討することをお勧めしています。

毎月払えそうな額でローン総額、購入物件の価格を決めるのではなく、何があっても必ず支払える額でのローン設定をしなくてはいけません。

また、いつでもそのまま住む、いつでも売れるという家の買い方をしなくてはいけません。

そのためには物件選びも大切ですが、買い方も重要です。

頭金は持っているけど、金利も安いし借入金は多めにしておく、これはアリです。

貯金もないし、頭金もない。

今の家賃額と同等なら払えるから、上限いっぱいまでローンを組みたい。

これはアウトです。

今の家賃額で貯金が作れていないなら、今の家計を見直さなくてはいけません。

家賃と同額の支払いに設定してしまえば、その先払えなくなることが容易に想像できてしまいます。

この場合、今の家賃以下での支払いで収まるように、もしくは生活が安定し貯蓄ができるようになってから購入すべきです。

今のうちに買ってしまえ!

これが最大の過ちに繋がりますのでご注意を。

住宅購入は大概の人にとって人生の重大イベントです。

浅はかな考えで購入に踏み切ってしまうと、取り返しのつかない失敗にもつながります。

私たち不動産エージェントは、家探し、物件探しをするだけの人ではなく、その人の人生を大きく左右するかもしれない節目に立ち会っているのです。

そう考えれば、年収や予算だけ聞いて、

『さぁ予算に合った家を探しましょう!』

なんてことには決してなりません。

紹介した不動産一つで、その人の運勢が吉にも凶にもなる仕事、それが私たち不動産エージェントの仕事なのです。

今の日本には家売るオンナ、家売るオトコは星の数ほどいますが、ライフプランニングまでしっかりとできる不動産屋さんはそう多くはありません。

私たちは数少ない、ライフプランニングを伴う不動産エージェントとしてみなさまのお手伝いをさせていただきます。

私の過去の失敗談を聞きに来てくれても構いませんし、そんな話を聞きながら反面教師にしたいただければ幸いです。

それは今年もみなさまからのご相談、ご依頼お待ちしております。

この記事を書いた人
大西 征昭

オーナー

大西 征昭Masaaki Ohnishi

不動産のことなら何でもお任せ。
ただの不動産屋ではないです、不動産の専門家です

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