住宅価格がかつてないほど高騰する中、マイホーム購入のハードルは年々上がっています。
従来の35年ローンでは月々返済が重く、若い世代ほど「家を買う選択肢」から遠ざかってしまう。。。
そんな声も少なくありません。
そんな中、今住宅ローン市場で新たに注目を集めているのが、「残価設定型住宅ローン」です。
これは、自動車購入でおなじみの“残価設定”という仕組みを住宅ローンに応用したもので、将来の売却価値(残価)をあらかじめ設定し、その残価分を差し引いた額だけを返済していくという新しい住宅購入の選択肢です。
今回は、この「残価設定型住宅ローン」がどんな仕組みなのか、なぜ今話題になっているのか、そしてこれからの住宅購入にどんな影響を与えそうかをわかりやすく解説していきたいと思います。
目次
残価設定型住宅ローンの仕組みをもう少し具体的に

残価設定型住宅ローンの最大の特徴は、
「将来の住宅価値をあらかじめ想定したうえで返済計画を立てる」という点にあります。
一般的な住宅ローンでは、
「借りた金額+利息」を完済することが前提です。
一方、残価設定型では、一定期間後(例:10年後・20年後など)に
住宅にどれくらいの価値が残っているか(=残価)を先に設定します。
そして、
- 残価を除いた金額のみを毎月返済
- 残価部分は、
- 売却
- 借り換え
- 一括返済
といった“選択肢”を将来選ぶ、という考え方です。
この仕組みによって、
月々の返済額を抑えながらマイホームを持つことが可能になる
これが最大の魅力だと言えるでしょう。
なぜ今「残価設定型住宅ローン」なのか?

この制度が登場した背景には、はっきりとした時代の変化があります。
かつては、
- 終身雇用
- 年功序列
- 一つの家に一生住み続ける
こうした前提が当たり前でした。
しかし今はどうでしょうか。
- 不動産価格が上がり続けている
- 「長く住み続ける前提」での住宅購入がしんどくなってきている
- 金融機関側も「出口(売却価値)」を織り込まないと貸しにくい
昔は
「買った家=一生住むもの」
だったけど、
今は
「住みながら資産としてどう動かすか」
を考えないと成り立たない時代になってきている。
だからこそ
“将来の売却価値を前提にしたローン”が登場したのです
- 転職は珍しくない
- 家族構成も変わりやすい
- 住む場所や働き方も柔軟になった
つまり、
「一生この家に住み続ける前提」でローンを組む時代ではなくなってきているという現実があります。
残価設定型住宅ローンは、
こうした価値観の変化に合わせて生まれてきた
“住まいを流動的に考える”ための金融商品とも言えます。
メリットだけを見るのは危険。必ず知っておきたい注意点
もちろん、良い話ばかりではありません。
残価設定型住宅ローンには、
必ず理解しておくべきポイントがあります。
- 残価は「保証された価格」ではない
- 市場環境によっては想定通りに売れない可能性
- 残価部分にも金利がかかるケースが多い
- 将来の出口(売却 or 借り換え)を考えずに使うとリスクが大きい
- クレジット情報として返済額以上の負債と見られるケースも
特に注意したいのは、
「月々が楽だから」という理由だけで選んでしまうこと。
これは、車の残クレと非常によく似ています。
仕組みを理解せずに使うと、
「最後にどうするか分からないローン」になりかねません。
残価設定型ローンは「向き・不向き」がはっきり分かれる
このローンは、
すべての人におすすめできるものではありません。
一方で、
- 将来の住み替えを視野に入れている
- 子どもの成長や転勤の可能性がある
- 資産としての出口戦略まで考えたい
こうした人にとっては、
非常に相性の良い住宅ローンになる可能性もあります。
大切なのは、
「借りられるか」ではなく
「将来どうするかを決めた上で借りるか」。
住宅ローンは、
家を買うための道具ではなく、
人生設計そのものだということを忘れてはいけません。
不動産価格上昇 × 残価設定ローンの相性
価格が上がっているから成立するロジック
残価設定型住宅ローンは
不動産価格が下がり続ける局面では成立しません。
なぜなら、
- 数年後
- ある程度の価格で
- 売却できる可能性がある
という前提があって、初めて成り立つ仕組みだからです。
言い換えると、
残価設定型住宅ローンは
「不動産価格が上がる、もしくは大きく下がらない」
という時代だからこそ生まれた商品
とも言えます。
- 残価設定=
「○年後、この物件にはこれくらいの価値が残るよね」という前提 - 下落局面では成り立たない
- 上昇 or 横ばい想定だからこそ、金融機関も踏み切れる
これは「お得なローンが出てきた」という単純な話ではなく、
不動産の買い方そのものが変わり始めているサイン
だと、僕は感じています。
「やどかり型住宅購入」という新しい住み方
ここで一つ、分かりやすい例えを。
これからの住宅購入は、
“やどかり型” になっていくんじゃないかと思っています。
やどかりは、
- 成長や環境の変化に合わせて
- 殻を変えながら生きていく
同じように、
- 独身・DINKSの時期
- 子育て期
- 子育てが終わった後
それぞれのライフステージで
「ちょうどいい住まい」って変わりますよね。
昔は
「最初から最後まで住める家」を探していました。
でも今は、
その時の自分たちに合った家に住み、
合わなくなったら次へ移る
そんな発想の方が、
結果的に無理がないケースも増えています。
- ずっと同じ殻に住み続けない
- ライフステージごとに住み替える
- 家を「固定資産」ではなく「移動できる住居+資産」として捉える
具体例で書くと
- 独身・DINKS期
→ 都心 or 利便性重視 - 子育て期
→ 学区・広さ重視 - 子育て後
→ コンパクト・駅近・管理重視
その都度、
「今の自分たちに合った家」に引っ越す
という考え方。
まるで賃貸住宅に住んでいるかのような柔軟性を持った引越しができる時代、それが今からの時代なのです。

数年住んで、値上がりしたら売却という戦略
ローンを「返す」前提じゃなく「動かす」前提にする
- 35年ローン、50年ローンを完走する必要はない
- 数年後に売ることを最初から想定
- 残債が重くなりにくい設計
住宅ローンは
“最後まで返すもの”ではなく
“次に進むための道具”なのです!
これは、従来の住宅購入の考え方とはかなり違います。
でも、今の時代には合っていると確信しています。
向いている人・向いていない人
もちろん、この考え方が
全員に向いているわけではありません。
向いている人
- 転勤や転職の可能性がある
- 家族構成が変わる予定がある
- 家に縛られたくない
- 不動産価格や市場の動きに興味がある
向いていない人
- 一生同じ場所・同じ家に住みたい
- 売却や価格変動に強い不安がある
- 「家は絶対に動かしたくない」と考えている
大事なのは
制度の良し悪しではなく、合うかどうかなのです。

家を「持つ」から、家を「使いこなす」時代へ
残価設定型住宅ローンは、誰にとっても万能な魔法のローンではありません。
でも、
- 不動産価格が上がり続け
- ライフスタイルが多様化し
- 人生の選択肢が増えた今
「住み替えを前提にした住宅購入」
という考え方を知っておくことは、大きな意味があります。
家を「一生の重荷」にするのではなく、
人生に合わせて、柔軟に使いこなす資産として考える。
そんな選択肢の一つとして、
残価設定型住宅ローンも視野に入れ、不動産の購入方法の一つとして、正しく理解してもらえたらと思います。






