最近、お客様向けというより、病院の従事者向けに、ケアマネさん向けに相続の勉強会を行っています。
当社では、シニア住宅相談センターという屋号で高齢者施設に入所する必要性が生じた時に、その方の要望に沿った施設紹介の事業も行っており、病院やケアマネさんと接触する機会が増えています。
そして、その中でどうしても今後発生するであろう、利用者さんの相続の話に対応できるための予備知識を教えてほしいという要望があり、医療従事者の方々に向けて相続の勉強会を開催しています。
今日は、その勉強会でもちらっとお話ししている相続登記の義務化の話を少しだけ。
勉強会でまず最初にお話しする話としては、この問題です。
目次
なぜ相続登記が義務化になったのか?
令和6年4月1日から相続登記が義務化されました。
この話は、不動産に関わる仕事をしている方はみんなご存じの話だと思います。
では実際、どの程度までこの義務化の話をご存じなのでしょう?
『相続登記しなければ罰則があるんだよね?』
『相続登記が義務化されたらしいじゃん。』
知っているといった人と話をしてみると、この程度しか理解できていない人が大多数でした。
そうなんですよね。人は自分に密接に関係する話しか興味ないですから、なかなかそこから踏み入った知識を得ようとはしません。
でも逆にこの新制度を利用して、ビジネスに転換している人たちも多くいます。
実際この4月からの相続登記申請の多いこと多いこと。。
この件をビジネス転用するかどうかは別にして、知っておくのと知らないとでは全然違いますから、この際勉強しておきましょう。
まず、相続登記が義務化されたきっかけについて知っておきましょう。
相続登記が義務化された背景には、所有者不明土地の存在が大きく関わっています。
今社会問題になりつつあるのがこの所有者不明土地、この2/3が相続登記未了による原因として発生していると言われています。
所有者不明土地が増えると、その土地の利用方法の問題(ゴミ屋敷になっていたり、雑草が生い茂ってニオイや治安の問題)や公共事業の妨げ(収用ができず工事が進まない等)に繋がり、隣接土地への悪影響を及ぼします。
その所有者不明土地が占める割合は、九州本土全域と同じ大きさとも言われており、そう考えるとかなりの社会問題ですよね。
その要因を少しでも減らすために、今回の義務化へ踏み切ったということなのです。
相続登記義務化の内容
①相続人は、自己のために相続(不動産、土地や建物)の開始があったことを知り、かつその不動産の所有権を取得したことを知った日からから3年以内に、相続登記を申請しなければなりません。(不動産登記法第76条の2第1項)
②遺産分割が成立した場合でも、遺産分割が成立した日から3年以内に相続登記を行う必要があります。(不動産登記法第76条の2第2項、第76条の3第4項等)
③正当な理由がないのに相続登記の申請義務を怠ったときは、10万円以下の過料の適用対象となります(不動産登記法第164条第1項)
相続が発生したら3年以内に相続登記を申請しましょうね~
しなかったら罰金10万円取られる可能性がありますよ~
これがおおまかな内容です。
そして、どうしても相続登記ができない、でも罰金が払いたくないという人に向けてできた制度が一つあります。
それが、相続人申告登記という制度です。
相続人申告登記
遺産分割協議がまとまらないなど、期限内に相続登記を行うことが難しい場合は「相続人申告登記」制度の利用でその義務を果たすことができます。
これは不動産の相続人であることを法務局に申告する手続きであり、相続登記の義務化にともなって新設された制度です。
「相続人申告登記」は相続人がそれぞれ単独で行うことができますが、申告をした方についてのみ相続登記の義務を果たしたものとみなされます。
相続人同士の話し合いが決着しない、でも自分は義務は果たしましたよと主張するための制度です。
ですが、 遺産分割に基づく相続登記の申請義務を履行することはできません。
そして、 不動産についての権利関係を公示するものではないため、相続した不動産を売却したり、抵当権の設定をしたりするような場合には、別途、相続登記の申請をする必要があります。
申請の手続きとしては
①必要な戸籍の証明書(戸除籍謄本等)等を添付して、自らが登記記録上の所有者の相続人であること等を期限内(3年以内)に登記官(不動産を管轄する法務局)に申し出ることで、義務を履行することができます。
登記官は、所要の審査をした上で、申出をした相続人の氏名・住所等を職権で登記に付記します。
手続の基本的な流れは相続登記の申請と同様ですが、以下のような特徴があります。
○ 特定の相続人が単独で申出可(他の相続人の分も含めた代理申出も可)
○ 申出手続(オンラインでも可)において、押印・電子署名は不要
○ 専用のソフトウェアを利用することなく、Webブラウザ上で手続が可能(かんたん登記申請の利用が可能)
○ 法定相続人の範囲・法定相続分の割合の確定が不要(提出書類も少ない)
○ 非課税
使えるのか使えないのかよくわからない制度ですね(笑)
結局、これをしたからといって、この内容を基に売買できるものではありませんので、あくまで義務の履行という点においてのみ使える制度というところでしょうか。
以上が相続登記義務化の話でしたが、実際には罰則規定がそんなにきつくないこと、そして相続登記が行われていないことを調べるのに多大な労力を要することなど考えたら、相続登記の義務化というワードを強調することにより、相続登記の申請を促そうという意図なんでしょうね。
でも、相続登記をしないことのリスクはこれだけじゃないんです。。
相続登記をしないリスクは罰則規定ではなく・・
相続登記をしないことで起こり得るリスクは過料(罰金)だけではありません。
相続登記を行わなかったことで、相続人が定まっていない状態が継続することになります。
誰かが亡くなったら、その配偶者や子どもが、またその子たちが亡くなったらその相続人がという風に、どんどん相続人が増えていく事になります。
相続人を洗い出すために調べ出したら、相続人は何十人にもなっていた。
こんな話は少なくありません。
相続人の一人が海外に居住していたり、親族との連絡を全く取らず音信不通になってしまっている、こんなケースでは、相続登記を完了するまでに要する期間は1年、2年に及んでしまうケースも。。。
売却しようとしても売却できない、手放したくてもどうすることもできない、こんな土地が増えています。
不動産は持っているだけで、固定資産税という税金がかかります。
相続人が多いと、その不動産を貸したり売ったりという行為にも障害が生まれます。
そのままにしておいておけば、損することはあっても得することはないのですよね。
なので、今回の相続登記の義務化、このタイミングでの相続登記への手続きをしておくことをお勧めします。
最後に、相続登記をした場合の一番のデメリット、これだけお伝えしておきます。
相続登記が完了すると、相続登記が行われた旨が法務局にデータとして残ります。
そして、その登記された情報は誰でも見ることができます。
その月に相続登記が行われたデータだけを抽出して見ることもできます。
この何がデメリットかというと、そのデータを見た不動産屋さんからたくさん郵便物が届いたり、法人さんや電話番号登録している人に対しては、数多くの電話が鳴ったりします。
直接自宅に訪問してくるケースも増えています。
売るつもりも何もないのに、いろんな不動産会社からセールスにやってくるのです。
相続登記を義務化にするなら、権利変動した不動産登記だけをピックアップできないようにした方がいいんじゃないかな。。
個人的にはそう思っています。
私自身もこのデータを使って、アプローチしていたこともありますが、今はかなりの数の不動産屋さんが今この動きしているので。。。
いいか悪いかはそれぞれの人の判断なので、どうなのかは知りませんが、こういうのを悪用して詐欺に使われることもあるかもという余計な心配をしてしまいます。
相続登記の義務化だけで、こんなに長々と書いてしまいましたが、不動産屋さんである限り、こうした情報、新たな制度とかは知っておかないとですね。
それでは、また次回も相続のことについて書きたいと思います。
こうご期待。