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  3. 相続土地の国庫帰属制度
2024年9月20日

相続した利用しない土地を手放す制度として、2023年4月27日に新しく設けられました。

分かりやすく言うと、いらない土地を国が引き取ってくれますよという制度なのですが、何でもかんでも引き取ることはしないし、引き取るためにはいくつかの要件をクリアしてくださいね、そして引き取る場合は国にお金を払ってくれれば引き取りますよ。こういう話です。

『国が不要な土地を引き取ってくれるんでしょ?』

この部分だけが先行して伝わっており、ただで引き取ってくれる、権利を放棄すればわずらわしさから解放される、そう思っている人が大半です。

なので、今日はこの制度について詳しく解説したいと思います。

この制度のポイント

相続土地国庫帰属制度のポイントは、以下のとおりです。

(1) 相続等によって、土地の所有権又は共有持分を取得した者等は、法務大臣に対して、その土地の所有権を国庫に帰属させることについて、承認を申請することができます。

まず、冒頭に「相続等によって・・・」と書かれているように、相続又は遺贈によって取得した土地のみが対象です。

つまり売買などで自身で購入した土地は対象外になります。

また、兄弟など複数人で共同所有している場合は、所有者全員の合意が必要となります。

例えば、兄弟3人で持分を1/3ずつ持っているような場合に、自分の持分のみを国へ返すことはできません

(2) 法務大臣は、承認の審査をするために必要と判断したときは、その職員に調査をさせることができます。

ここに書かれているように、調査させることができるだけで必ず承認されるわけではありません。また、調査をしてもらうためには申請が必要になり、その申請費として土地一筆あたり14,000円が必要になり、10筆ある場合は10×14,000円=140,000円の審査手数料が必要になります。

(3) 法務大臣は、承認申請された土地が、通常の管理や処分をするよりも多くの費用や労力がかかる土地として法令に規定されたものに当たらないと判断したときは、土地の所有権の国庫への帰属について承認をします。

ここでようやく、国庫への帰属が認められるわけです。

そして、

(4) 土地の所有権の国庫への帰属の承認を受けた方が、一定の負担金を国に納付した時点で、土地の所有権が国庫に帰属します。

ようやく認められたとしても、一定の負担金を支払って初めて国庫帰属への流れとなるわけです。

この一定の負担金に関しては、上図では10年分の土地管理費相当分と書かれていますが、その内容についてはまた後ほど説明するとして、まず知っておかないといけないことは、どのような土地の場合、承認を得られないかということです。

引き取ることができない土地

(1) 申請をすることができないケース(却下事由)(法第2条第3項)

A 建物がある土地

土地の上に建物が建っている時点で対象外となります。

B 担保権や使用収益建が設定されている土地

抵当権などがついている土地は対象外になります。

C 他人の利用が予定されている土地

現在、道路として利用されている土地や墓地内の土地、境内地、そして現在、水道用地、用悪水路、ため池として利用されている土地は対象外となります。

D 土壌汚染されている土地

まぁ、これはそりゃそうですねって話ですけど、工場用地として使用されていた土地、薬品を使用する業種に賃貸していた土地、ガソリンスタンド跡地などもこれに該当しますかね。

E 境界が明らかでない土地・所有権の存否や範囲について争いがある土地

最後に来ました。これが厄介です。境界確定してから渡してね~。そういうことです!!

しかも、山林などでは境界確定するためには樹木の伐採などが求められるケースもあり、かなり困難なケースも想定されますね。。。

 (2) 承認を受けることができないケース(不承認事由)(法第5条第1項)

次に、申請はできるが不承認になるケースの説明書きがありました。

A 一定の勾配・高さの崖があって、管理に過分な費用・労力がかかる土地

政令で定める崖の基準(勾配30度以上+高さ5メートル以上)に該当する崖がある土地であって、通常の管理に当たり過分な費用又は労力を要する場合には、帰属の承認をすることができません。

だそうです。不動産業者の買取基準より厳しいかも(笑)

B 土地の管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地

少しわかりにくい説明ですよね。

より深く書かれている文書を見てみます。

ア 工作物、車両又は樹木その他の有体物が存する
イ その有体物(※)が土地の通常の管理又は処分を阻害する

※ イの考え方について
森林において樹木がある場合や、宅地において安全性に問題のない土留めや柵等がある場合など、その土地の形状・性質によっては、地上に有体物が存したとしても、必ずしも通常の管理又は処分を阻害するわけではありません。

はい。余計に分からなくなりました。(笑)

簡単に言うと、放置された車が置かれたままになっていたり、果樹園などの樹木、竹など定期的に手入れが必要なもの、そして廃屋などがあれば、すべて撤去してからでないと認めませんよ~

っていう話ですね。

C 土地の管理・処分のために、除去しなければいけない有体物が地下にある土地

今度は地中埋設物についても言及してきています。

産業廃棄物が埋められていたり、従前の屋根瓦や基礎、水道管などが埋まったままではダメですよと。

D 隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない土地

分かりやすく言うと、無道路地。道路に面していなく再建築できない土地や、不法占拠者がいる土地、別荘管理組合などからの管理費が請求される可能性がある土地。。。

もはや、引き取るつもりのないような言葉がズラズラと並べられています。

E その他、通常の管理・処分に当たって過分な費用・労力がかかる土地

土砂災害や、崩落の可能性がある土地もダメです。

その他にも、

F 土地に生息する動物により、土地や土地周辺の人、農産物、樹木に被害を生じさせる土地

G 適切な造林・間伐・保育が実施されておらず、国による整備が必要な森林

H 国庫に帰属した後、国が管理に要する費用以外の金銭債務を法令の規定に基づき負担する土地

I 国庫に帰属したことに伴い、法令の規定に基づき承認申請者の金銭債務を国が承継する土地

と、いろいろ書きましたが、基本みなさんが相続しても大変だ、今すぐ放棄したい、そう思っている土地のほとんどはこの国庫帰属制度が使えなさそうです。

申請に必要な書類

1 承認申請に係る土地の位置及び範囲を明らかにする図面

住宅地図もしくは法務局で取得する公図で位置を示すことになります

(2)承認申請に係る土地と当該土地に隣接する土地との境界点を明らかにする写真

境界杭、鋲があることを示す写真を添付します

(3)承認申請に係る土地の形状を明らかにする写真

建物が存在していないこと、高低差がないことが分かるように写真を添付します

(4)申請者の印鑑証明書

(5)申請書

こちらは法務省のホームページよりダウンロードいただけます

単独申請の場合の書式単独申請の場合の書式記載例

(6)相続人が遺贈を受けたことを証する書面

・遺言書
・亡くなった方の出生から死亡までの戸籍全部事項証明書、除籍謄本又は改製原戸籍謄本
・亡くなった方の除かれた住民票又は戸籍の附票
・相続人の戸籍一部事項証明書
・相続人の住民票又は戸籍の附票
・相続人全員の印鑑証明書

(7)固定資産評価証明書

申請書類は以上です。相続登記未了の状態で申請する場合は、遺産分割協議書なども必要になります。

審査フロー図もあったので、ここで再確認しておきますね

①承認申請して、審査手数料を納付する

②書面審査・実地調査を法務局担当官が行う

③承認される➡承認通知と負担金が通知される

④負担金を納付する

⑤国庫帰属

こういう流れですね

負担金っていくらくらいなの?

ここまで、国庫帰属制度(国に引き取ってもらう)についていろいろ説明してきました。

国庫帰属に至るまでのハードルの高さをまず感じたことでしょう。

そして、ようやく認められたとしての話をこれからします。

国が引き取ってくれるんだから、ひょっとして高く買い取ってくれるのでは?

そう思っている人は少なくありませんが、実はまったく逆です。

引き取ってあげる代わりに、その対価を支払いなさい。お金を払ったら国に返すことを許可します。

これがこの制度の概要です。

では実際、どのくらいの費用を払って引き取ってもらうのかという話です。

気になりますよね~

簡単にまとめてくれている表があったので、まずこれをシェアします。

宅地は、面積にかかららず20万円。

市街化の宅地(市街化区域または用途地域が指定されている地域)については、以下の計算式に基づいて計算します。

100㎡の土地なら約55万円、200㎡の土地なら約80万円

田・畑の場合でも基本20万円。上記と同じく市街化区域の土地なら、上記の表のような計算になり、500㎡で約72万円ほどの負担金が必要になります。

結構高いなと思った人も多いかも?

ですが、この負担金ですべてが終わるわけではありません。

境界確定の費用、これがだいたい単純な相場ですが、1ポイントあたり10万円ほど必要なので、真四角に近い土地でも40万円、複雑な形をしている土地とか、隣地との接点が多い土地なら60万円~。

場合によっては100万円を超える測量、境界確定の費用が必要です。

それに加え、樹木の伐採・伐根費用、家屋がある場合はその建物の解体費用、室内にある残置物の処理費用、これらを含めると2~300万円かかる場合も少なくありません。

簡単に利用できる制度ではないということが、分かっていただけるのではないでしょうか?

かといって、不要な土地を自分の代で処理しておきたい、こどもたちに引き継がしたくないという要望は後を絶ちません。

そりゃそうですよね。

自分の代でも、

『親父処理しておいてくれよ~。何でこんな土地買ったんだよ~』

そう思っているのに、自分のこどもたちが困ることは容易に想像できますんもんね。

他の財産と一緒に、こういった田舎の見たこともない土地を相続するケースは増えています。

無料でも引き取り手が現れない理由

『タダ(無料)でもいいから誰かもらってくれないかな?』

だいたいそういう話から始まるのですが、タダでも貰い手は現れません。

それは、その売り手と買い手(ここでは貰い手)を繋ぐのはほとんどのケース不動産会社だからです。

無料の物件を仲介しても仕事になりません。

従来の仲介手数料の上限額、200万円以下の物件は物件価格の5%、これでいうと10万円の物件の仲介手数料は5000円です。

5000円って、物件を調査に行く交通費、謄本代で消えてしまいます。

しかも、田舎の土地を調査するとなると1日では終わりません。

2~3日かけてタダ働き、だれもやりたくありませんよね~

そこで、2024年7月より、低廉な空家住宅に関しては、媒介報酬額の規制を見直すように法律が変わりました。

低廉な空家等(土地でもOK)に関しては、仲介業者さんがこの5%ではなく33万円まで報酬としてもらっていいですよという風に変わったのです。

これにより、不動産会社がこの低廉な住宅に関して仲介業として活動する意味が出てきました。

国土交通省もここに書いてあるように、「ビジネス上の課題」があると指摘している通り、動いた方が損するのがこの低廉住宅でしたから、これで少しは流通が生まれるかもですね。

ということで、最低限33万円を支払えば、不要な不動産を手放せる可能性が出てきたわけです。

とはいえ、その不要な不動産をもらう側からすると、自分が33万円もらえるわけではないので、結局タダでもらってくれる人を探すことになりますので、結局一緒なんですよね。

最近では、この不要な不動産をお金をもらって引き取る仕事が登場しています。

今日長々と説明した国庫帰属制度でかかる費用に比べて、安く引き取りますよ~という商法です。

基本的には、境界確定までは求めず、樹木の伐採費用、伐根費用+10年相当分の管理維持費を払ってもらい引き取るというものです。

いずれにせよ、現況の状態、境界の有無、権利関係の有無などは調査しないといけませんから、その費用を請求し実際には引き取らない、こんなケースもあるそうです。

困っている人の弱みに付け込んで、さらに費用をむしり取る業者がいるんですね。。。

ということで、こういった不要な不動産を引き取る機構・団体を作れないか、今議論しています。

できあがったらまたみなさんに報告しますね~

現地調査、引取り費用の見積もりを当社が行い、買取り先、引受先を探す、こんな形ではすぐに始動できそうなのですが、それではお客様の要望に応えきれていないですからね。

不動産の世界から不をなくす

これがテーマのRE/MAXですから、お客様のニーズに応えるべく、お客様の悩みを解消すべく行動していきたいと思っています。

ご期待ください!

この記事を書いた人
大西 征昭

オーナー

大西 征昭Masaaki Ohnishi

不動産のことなら何でもお任せ。
ただの不動産屋ではないです、不動産の専門家です

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